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2020.01.13

「未来のための“学び”」をデザイン

子どもたちをはじめとした市民の社会課題への気づきと解決への行動を引き出す「未来のための“学び”」をデザイン

とよなかESDネットワークとはどういった活動団体?

ESDとはEducation for Sustainable Developmentのそれぞれの頭文字を取った略語で、訳すと、「持続可能な開発のための教育」となります。
わかりやすく言うなら将来の世代のことも考え、さまざまな社会課題を解決して、みんなが安心し、満足して暮らせるようにするための教育―「未来のための学び」です。

私たちは豊中の地域資源を活かしたESDプログラムをつくり、市民団体、地域団体、学校、企業、商店などと一緒になって、子どもたちや市民に向けた教育、啓発活動を行っています。
活動をするうえで私たちが一番大切にしていることは、“社会課題への気づきを引き出し、解決への行動”につなげるということ。

社会課題を他人ごととして捉えるのでなく、「自分ごととして考えられる」ことがこれからの社会の担い手となる若者に必要な資質・能力だと思います。

例えば人権問題をテーマとするなら、人権問題にまつわる歴史から入るのでなく、まずは自分を見つめることから。それから自分を大切にするには?友だちとどう付き合う?などのプロセスでじっくり深めていく。
消費生活をテーマとするなら、この買い物はみんなが幸せになる買い物かな?消費した後の廃棄物の分別をきちんとしなかったら、どのような影響が出るのかな? 買い物をする時にちょっと考えてみよう、などのプロセスでじっくり深めていく。

自分の行動ひとつが経済社会を、世界を動かすことにつながっていることを、子どもにも気づいてもらえるようなアクティビティをふんだんに取り入れた、参加型の学習とすることをプログラム開発のポイントにして出前授業や講座を行なっています。

とよなかESDネットワークを立ち上げられたきっかけとは?

そもそもの話に立ち返ると、ESDという概念は2002年にヨハネスブルグ・サミットで提案され、2005年からの10年間、国連のキャンペーンとして世界中で取り組みが進められました。
ところが豊中市は一足早い2004年に、官と民が協力してESDキックオフミーティングが開催されており、そのため、「豊中市は日本で一番はじめに“ESD”に取り組んだまち」と言われていました。その後、学校や地域、行政が連携しさまざまな活動を実施してきたという歴史があります。

私は当時、国際交流センターで多文化保育の活動に関わっていたため、国際や人権、子育てなどのテーマに対する関心があり、「赤ちゃんからのE S D」というグループを立ち上げ、活動が始まった当初からボランティアとして関わらせていただきました。
ESDの10年を機に、市域全体でのESDの取り組みが下火になりつつあったのですが、『やめてはいけない! 今こそESDを続けよう!一緒に盛り上げよう!』と、今まで市内でESDに取り組んできた仲間に声をかけてNPO法人を立ち上げ、活動を継続しています。

子育て女性を取り巻く課題とどうすれば改善できるかについてのお考えは?

当団体は特に女性に特化した活動をしているわけではなく、男性も、生きづらさを抱えている人も、多様な人全てが個性を大切に、お互いを尊重し合いながら共に生きていける社会をつくるというダイバーシティ・インクルージョン(多様性受容)の考えのもと、活動しています。

ただ、スタッフに女性が多いことや、教育に軸足を置いた活動をしていることから、女性と子どもに対するアプローチはとても重要と考えています
子育て中は、子どもに関するさまざまな悩みが尽きませんが、案外視野が狭くなりがちです。
だからこそ自分だけで抱えないでほしい、何か困ったことがあった時は遠慮なく地域の支援者を頼ってほしいと思っています。

私たちは豊中市の委託を受け、現在、豊中市市民活動情報サロンも運営していますが、その中で、さまざまな交流会を行っていますので地域に知り合いがいない、相談相手がいない、という方は、ぜひ気軽に参加していただきたいです。

感じている手ごたえは?

2020年は「70年ぶりの教育改革」と言われる学習指導要領が改訂される年です。
それにあたり、近年着目されているのが「アクティブ・ラーニング」という授業手法なのですが、私たちは早くから「アクティブ・ラーニング」を取り入れた授業や研修を実施してきました。そのため、最近では学校などからの相談や、授業オファーが増えたように感じています。

相談や授業オファーが増えたことは、とてもありがたいと思うと同時に、私たちのような地域のNPOが、積極的に教育に関与することで、学校、学校教員をサポートし、教育現場が疲弊してしまうのを未然に防ぐことにつながればいいと考えています。

本来、学校だけが子どもの教育責任を負うものではないと思います。子どもたちを育むのは社会全体。そして家庭教育が大切だと思います。例えばママ自身が社会に関心を持ち、早い段階から子どもと社会的な視点での対話ができたらいいですよね。社会とつながって得た知識や経験を子どもにリアルに伝えていくことができたら、家庭教育の充実につながり、社会で子どもを育てる基盤づくりの一歩になると思います。

また、豊中市がESDに取り組み始めた当時はまだ赤ちゃんだった子どもが成長して、主体的な学びを活かしたボランティア活動を始めた、とか子育て中だったママが地域で団体を立ち上げたなど、活発に活動している様子を見聞きすることが増えました。
それも大きな成果だと思っています。

大阪・関西万国博覧会の開催が決まり、招致の要となったSDGsをいかに市民に浸透させるか、について市民団体などからの需要が高まっていると感じています。
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略語で、2015年9月に国連サミットで加盟国が合意した、2016年から2030年までの15年間で達成する「持続可能な開発」目標のことで、『地球の誰一人として取り残さない』を理念に、“貧困をなくそう”、“飢餓をゼロに”、など私たちが今まで継続してきたESDに関連した「世界を変えるための17の目標」が具体的に定められました。
これにより、『日々の暮らしと世界のことをどう考えてゴールと結びつけていくか』といった形で、プログラムの着地点も定めやすくなり、いい流れが来ていると感じています。

今後やってみたいチャレンジは?

さまざまな事業を行っていますが、それら事業は必ずどこかでさまざまな人や組織とつながっています。
…と言うより、“つなぐ”ことや“つながる”ことをあえて意識したうえで活動しているのかもしれません。

私たちの団体だけでできることは限られていますが、めざすべき方向が同じ人や組織と積極的につながりを持っていくことで、その可能性は何倍にもなると考えています。
学校も含めた地域全体で子どもも大人もイキイキと過ごせる新たな仕組みをつくりたい。
そのためにもこれまで以上に積極的に地域に出向き、さまざまな人や組織とのつながりを大切にしながら活動の輪を広げていきたいと思っています。

Profile

事務局長 上村 有里 さん

Job

取材先:特定非営利活動法人 とよなかESDネットワーク

Introduction
豊中ESDネットワークは、「未来のための“学び”をサポートする」ことをコンセプトに、豊中の地域資源を活かしながら、さまざまな場面に応じた学びの場のデザイン、地域の困りごと解決のサポートなどを手掛ける団体です。
「70年ぶりの教育改革」に伴い、近年学校現場などからニーズが高まっている、互いに学び合うことができるESDプログラムの作成や学校、施設などへの講師派遣を行っています。

豊中市ESDセミナーコーディネーター、ワークショップファシリテーターなどを務め、現在豊中市市民活動情報サロンの常勤スタッフで責任者である上村 有里さんにお話を伺いました。

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