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2020.01.1

「多世代交流」おうち保育園

地縁がなく孤立した子育てに不安を抱えるママを助けたい。「多世代交流」をコンセプトとしたおうち保育園

団欒長屋とはどういった活動団体?

地域全体で子どもの成長を見守っていく現代版「向こう三軒両隣」をイメージした保育施設です。
子どもたちを中心とした多世代交流の空間として、積極的に地域の方々と関わる機会をつくっていきたいと考えています。
また、家事と育児と仕事で毎日大変な働き盛り世代と、経験豊富なリタイア世代の『困った』と『得意』をつなげる拠点となって、暮らしをシェアできる世代間の互助的でゆるやかなコミュニティとなれば、とも考えています。

保育の観点からは、子ども一人ひとりが個性ある主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくように、自分の意見をきちんと表明し、相手の考えも受け止められるようサポートします。
また子どもの創造性を刺激するよう、なるべく手作りの玩具や遊びを取り入れ、表現力や想像力を育んだり、外遊びや畑作りを通して自然に触れ合い、四季の変化、生命の尊さに気付くことを通じて、観察力や探究心を培います。

団欒長屋を立ち上げられたきっかけとは?

私はシングルマザーで、当時は仕事も、お金も、家もない状態で困っていたところ、知人の紹介でこの豊中に引っ越してきました。血縁も地縁もない土地でしたし、娘はまだ0歳。買い物ひとつ行くのも大変で、今思えば孤立した状態で子育てをしていたと思います。

とにかく、まずは生活を立て直さないといけない。そのためには、まず仕事を探すこと。同時に娘の預け先を探すこと。ところが保育園は勤め先が決まらないと先に進めません。会社は子どもの預け先がないと採用をもらえませんし…。
どちらもなかなか進まないというジレンマに陥ってしまい、娘と二人、どうなってしまうんだろうと気が滅入り、引きこもってしまった時期もありました。

でもやがて、ひとり親に理解のある会社で働けることになりました。保育所もまずは一時保育でしのぐことになりました。ただ一時保育だとフルタイム勤務が難しく、週3日勤務の条件を受け入れてくださいましたし、子どもの急病時に早退することなどもしばしばありましたが理解をしてくださり、本当に有難かったです。

その後、会社が豊中市の地域情報を発信する事業を受託し、娘も4月からどうにか遠くの家庭保育所に決まり、1年間の有期雇用で働かせていただきました。
豊中を取材して回り、大阪市内のオフィスで編集作業。たびたび残業もし、まさに働きづめといった感じでしたね。

娘が1歳になり、2歳になろうとする頃、本当に可愛い時期だったのに、あまり記憶がなくて…。
親目線では、そこだけがとても心残りでした。
自営業を始めたのは、もう少し子どもの成長に合わせた働き方をしたい、と思ったことが大きかったと思います。

仕事を通じて、豊中市内の商店、企業、NPOなどいろんな所を取材させていただくうちに、地域に根差した活動をされている方など、たくさんの出会いがあり、刺激を受けました。
私もこの豊中でせっかく新しい人生をスタートさせるのなら、やっぱり地域に根を張ってやっていきたいと思うようになりました。また血縁も地縁もない土地で子育てをするというのは、娘にとっては、私と保育士さんしか接する大人がいない状態。それも何とかしたかったのです。

私は近所のおじいちゃん、おばあちゃんや、同年代の子どもは勿論、そのきょうだいなども含めて、近所に見守られながら育ってきた経験があったので、娘にもいろんな人と関わって、さまざまな価値観に触れて…そんな育て方をしたいと思っていました。

自分の子どもも含め、認可に入れなかったお子様を受け入れる、多世代交流をコンセプトとした保育施設をつくろう―私の思いに共感し、必要としてくれる人は必ずいるはず!
決意を固め、1年間たくさん学ばせていただいた後、会社を退職、2013年に団欒長屋をスタートさせました。

子育て女性を取り巻く課題とどうすれば改善できるかについてのお考えは?

豊中は地域色に違いがあると思います。ここでお預かりするだけでなく、ホームサポーター派遣などを通じて、豊中市内の様々な地域にお伺いすることもありますが、育児の悩みは人ぞれぞれ。働くママだけが大変というわけではないと思いました。

以前、専業主婦の方から育児相談がしたい、とお子さんを連れて来られたことがありました。
一見、何も問題がなさそうに見えるのですが、パートナーが自分の大変さを分ってくれない、というものです。躾を責められる、義理の母も厳しい。
あるいは子育てだけでなく、介護まで全てを一人で背負わされる、というケースもあります。
専業主婦の方でも、周囲に理解されない中で孤立して子育てをされている方は一定数いらっしゃると思います。転勤族やタワーマンションなどにお住いの方は特に地縁が薄く、子育てで困ったことがあっても周囲にSOSを出しにくいというのがあるのではないでしょうか。

ここは、働いている方、離職されている方、特に分け隔てなく預けられる場所ですし、保育相談にも応じますので、何か悩みがあればご相談いただければと思います。

感じている手ごたえは?

支援させていただいていた方が今度は支援者(担い手)として関わってくださるケースが増えてきました。
例えば「子ども食堂」は、もともと学童保育を利用されていた方が提案してくださって実現したもの。
親戚の集まりよりはゆるいけど外食よりは密度の濃い、「ゆるい家族」のようなお座敷の食卓風景で、子どもたちとごはんをつくるところから始めて対話をしながら、配膳から盛り付け、片づけ、掃除まで、大人がサポートしつつ子どもたちが主体で活動するスタンスです。

みんなであたたかい食事を食べる居場所づくりをしたい―団欒長屋で「子ども食堂」を始めたきっかけは、利用者のお母さんご自身の願いから来るものなのです。
家にお金を置いて子どもだけで買って食べてもらい、長時間労働…そういう生活をずっとされてこられ、月に数回でも賑やかな食卓で温かな食事を食べてもらいたい、というのが願いでした。

そして一人親家庭ならなおさらですがどこの家庭でも、子どもに調理や掃除などの生活力を身に付けてもらい、自立心を育てたいと思うもの。
だから全員参加型で作るところからみんな一緒にやるというやり方にしています。
また学童保育に来ていた子どもたちが、中学、高校に上がってからもボランティアとして手伝いに来てくれたり、ホームサポーターを派遣していた家庭で産後うつになっていた方が保育士の資格をとって働きたいと言っておられます。資格を取得したらぜひ団欒長屋で働いてください!と伝えています。

豊中市のママはポテンシャルが高く、社会に復帰するために、また地域で役に立ちたいといろいろ勉強されている方は私が見た限り、少なくないと感じています。
またシングルマザーは一般的には支援される側になっていますが、シングルマザーでも自分が誰かの支えになっている、誰かの役に立っていると思える行動を起こすことができますし、それがその人の生きる意味になると思います。実際私はそうやって救われましたから。

今後やってみたいチャレンジは?

私はシングルマザーを「強み」として生きてきました。
強みと出来た理由は、自分だけでは何もできないということを前提にできたからです。
だから、いろんな人に助けを求めて、いろんな人に助けられて、今度はその恩返しを―そんな気持ちでやってきました。団体としても団欒長屋だけではできないことを他の団体と連携しながら新しいことをする、ということを得意とできましたので、今後もいろんなところとつながってさらに大きな課題解決につながることに関わっていければいいな、と思います。

Profile

代表 渕上 桃子さん

Job

取材先:団欒長屋(だんらんながや)

Introduction
0歳のお子さんを連れて転入されてこられた自らの経験から、地縁がなく孤立した子育てに不安を抱えながらも頑張るママのためにと立ち上げた団欒長屋。どこか懐かしく、ほっとするレトロな木造平屋建てをリノベーションしたおうち保育園です。
月極保育や一時預かり、ホームサポーター派遣など乳幼児保育に留まらず、「多世代交流」をコンセプトに子ども食堂、交流の場づくりなどさまざまな活動を展開されています。

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